綴じ込みページ 猫-126

 靴を落札させていただいた出品者の方々からは、それぞれきちんとしたご挨拶をいただいた。 オークションの取引は、おおむね一過性のものだから、商品がちゃんと届いたり、早急に入金されたりすることに対しては感謝の言葉を述べるが、なかなか普通の会話にまで発展しないものである。
 ぼくは、たいていの場合、お礼の言葉に添えて、まったくの余談を書き加える。靴を落札したときには、なぜこの靴が必要だったか、といったごく他愛ない事柄ではあるが。
 最初に購入したK氏からは、こんな返信をいただいた。
 

 到着のご連絡ありがとうございます。
 私も靴のサイズでは今まで苦労してきました。


 初めて本格的な英国靴を購入したのが、新卒で社会人になった時でした。今から15年ほど前の事です。


 ジョンロブのストレートチップ(シティ)を買いました。
 その時は、履いていくうちに底が沈むことも知りませんでしたし、厚手のカジュアルなソックスを履いてフィッティングした事もあり、さらにはパリでの購入でしたので、かなり大きめのサイズを購入してしまいました。しかしながら大変素晴らしい革質で、今でも冠婚葬祭の際はこれしか履きません。


 その後、徐々にフィッティングをタイトにしていき、ここ数年でやっと理想のサイズが判ってきた次第です。まだ小さい息子がいますが、彼らには初めからある程度ジャストなサイズを将来成長した時にアドバイスできそうなくらいになりました。


 エドワードグリーン、大切にしてあげてくださいね!
 それではまた機会がありましたらよろしくお願いします。
 K


 次に購入したN氏からも、返信をいただいた。


 無事商品が届いたとのことで安心いたしました。


 私は足の実寸が25cmですが、ショップですすめられたエドワードグリーンのUK6サイズを何足か購入し、結果、足を痛めた後、自分のサイズはUK6.5で有ると判明しました。高い勉強代でした。


 実寸24.5cmであれば、きっとちょうどお合いになると思います。
 T様のような素晴らしい方にご購入いただいて、喜んでおります。ぴったり合うとのことで、うらやましい限りです。また機会がございましたら、その節はどうぞよろしくお願いいたします。
 N


 どちらも正式な販売店で定価で購入されている様子がありありと見えて、オークションで格安に入手したぼくなんかとは格段にレヴェルが違うけれど、内田百間先生のひそみに習って、いじけることなく堂々としていよう。
(つづく)