2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P128

青空の下に檻ある辛夷かな 横浜市西区、野毛山動物園での作。この日のお目当ては黒豹だった。檻の前に立つと黒豹は牙をむいてしきりに威嚇する。敏捷な身のこなし、不敵な面構えは野生そのもの。ときどきちらっと見せる桃色の舌がなんともかわいかった。春を…

大木あまり「シリーズ自句自解1 べすと100」P126

わが柩春の真竹で作るべし 「一生が短いか長いかはその人によるけれど、人間が一番輝くのは死んだとき」と母は言った。ならば、最後を輝かせるために自分の美意識に適う青い竹の柩を作りたい、そう思った。それも生きているうちに西行の忌日に合わせて竹で編…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P124

祇王寺へ水仙売の消えにけり 嵯峨野が好きで、四季折々の嵯峨野の景色を楽しみながら、〈落柿舎や頭めぐらす雀の子〉〈野宮や春の落葉の氷りたる〉など他にも沢山の句を作った。この祇王寺を訪れたとき偶然、水仙売に出会ったときのもの。野水仙の束を抱えた…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P122

火に投げし鶏頭根ごと立ちあがる 鶏頭の個性的な立ち姿は、猛々しいが万葉集では「韓藍(からあい)」と詠われ若い女性に喩えられている。 そんな、不思議な赤紅色の鷄冠(かんむり)形の花の美しさと力強さを詠むために、枯れた何本かを燃やしてみたことが…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P120

雨やみしのちのかなかなしぐれかな 山西雅子さんと鎌倉の杉本寺に吟行したことがあった。境内の木陰で、周りの風景を眺めながら作句に集中する雅子さん。私は小動物のようにせわしなく歩き回った。歩きながら、対照的な二人の友情が長続きしているのは聡明で…