2014-02-01から1ヶ月間の記事一覧

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世のなかには、一足三十五万円の靴がある。もちろん、カスタムオーダーの靴である。高すぎて冗談じゃない、とおもわれるかもしれない。しかし、冗談ではない。しかも、同じ型の靴を一回に十足以上注文しないとこしらえてくれないのである(ずっと昔、オーダ…

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最後の二足は、バーガンディというフランス産のワインからきたらしい赤茶色と、バーントパイン(焼けた松)という、なんというか、グレーっぽい茶系のような色合の靴だった。二足ひとからげで、セットで売り出されたのだから、色が気に入らなくても文句はい…

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「長靴をはいた猫」が頭に浮かんだのにはわけがある。ちょうど、オークションで、ブーツに入札したばかりのところだったからである。ぼくは、ほぼ半額で出品されたそのブーツが、もう何カ月も落札されぬまま繰り返し出品されているのを知っていた。しかし、…

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靴を落札させていただいた出品者の方々からは、それぞれきちんとしたご挨拶をいただいた。 オークションの取引は、おおむね一過性のものだから、商品がちゃんと届いたり、早急に入金されたりすることに対しては感謝の言葉を述べるが、なかなか普通の会話にま…

綴じ込みページ 猫-125

「長靴をはいた猫」のあらすじは、次のようなものである。 あるところに粉引き職人と三人の息子がいた。父親がなくなって、長男には粉引き小屋が、次男にはロバが、そして三男には猫が遺産として分与された。 三男は嘆いた。「猫なんか貰ったって、なんの足…