2016-08-01から1ヶ月間の記事一覧

大木あまり「句集 火球」三頁〜四十三頁

火球 三頁〜四十三頁 青空の雨をこぼせり葛の花 うやうやしき波の列くる懐手 マフラーのあづけものあり父の墓 鬼は外さびしき春を招くなり 焦げくさき風の吹きたる鱵かな (註:さより) 職人の座布団薄し鳥の恋 ゆるゆると身支度しをる桜かな 子燕の必死の…

大木あまり「句集 雲の塔」『第四章 魚のやうに』

第四章 魚のやうに 九十五句 弓なりの干潟となりぬ網雫 汐干狩雲に狩られるごとくをり 高風の貝を掘りをる愁ひ顔 洛北や花屑もやす薄煙り 夢殿にさげて一穂の麦青し ゴールデンウイークの数珠使ひけり くつがへる藻草の紅き端午かな 使はざる枕の匂ふ麦の秋 …

大木あまり「句集 雲の塔」『第三章 金閣』

第三章 金閣 九十七句 合歓の木や目覚めのはやき蛇の舌 金閣をにらむ裸の翁かな 金閣の裾を団扇で煽ぎけり 梅雨茸をたふし金閣去りにけり 郭公や煙が煙押しあげて 竹林はこの世のくらさ蛇の衣 明易の日矢の一矢を畝傍山 奈良盆地猫も歩かぬ暑さかな 女身より…

大木あまり「句集 雲の塔」『第二章 草の花』

第二章 草の花 八十五句 喪の家の焼いて縮める桜鯛 玩具箱遺されにけり花水木 昼顔や蕊のまはりのうすぼこり ヘミングウエイに似し老人の夏袴 波ころしまでを陸とし麦の秋 父の日のひかりはなさぬ岩畳 小百足のみづみづしきを打ちにけり 家々のことりともせ…

大木あまり「句集 雲の塔」『第一章 蕗の雨』

第一章 蕗の雨 九十三句 太陽をうたがはず山眠りけり 菜の花や怒り足らざる波頭 おぼろなる仏の水を蘭にやる 鎌よりも指が鋭き春の蕗 泥棒日記の男が死んで花盛り (ジャン・ジュネ逝く) 鳥雲に塔婆は薪となりにけり さらさらと葱に風くる復活祭 炎昼のチェ…