2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P118

終戦の日のかもめらに腋力 煌めく海の上を飛翔する鷗、海面や波間に漂う鷗を眺めていると、すごい腋力! と思う。両腕がなくても翼と強い腋の力があれば、懸垂をやらせても鷗は上手だろうし、平行棒や鉄棒など体操選手顔負けの演技をするにちがいない。顔つ…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P116

落ちてくる水の力や百合の花 瀧が好きで〈秋深きものにはるかな瀧ひとつ〉〈瀧音に肩をそがれてゐるごとし〉〈凍瀧や千年も待つここちして〉〈黙契は凍てたる瀧にこそすべし〉〈凍瀧や禽ちらばつて散らばつて〉など袋田の瀧で作ってきた。 あるとき、瀧の飛…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P114

嘴のかたさの箸や年の酒 我が家の正月はいつも〈おめでたうと言うても二人睨鯛(にらみだい)〉という感じである。毎年、元旦は日本酒で乾杯し、太くて長い箸で鷺や鴫が餌を啄んでいるみたいにおせち料理をいただく。太箸が嘴の固さだと気付くのものんびりと…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P112

のうぜんや牛の睫に藁ぼこり ある日、近くの教会の鐘の音とともに牛の鳴き声が聞こえてきた。気になって牛の声のする方へ歩いて行くと農家に一頭の牛が飼われていた。雌牛の名は夢子。鼻面を撫でると、まつ毛に藁のほこりをつけた彼女は、御返しに私の手のひ…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P110

蝉よりも生き長らへて蝉の殻 あなたが、君の好きな草の実をあげるといって蝉の殻をプレゼントしてくれたあの夏の日から何十回もの夏がめぐってきました。 最近、あなたと草原で風の音を聴きながらミルクティーを飲んでいる夢を見ました。夢の中の風景はすべ…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P108

水銀の流るるごとし川の蛇 近くの川辺を歩いていると、夕映えの川面をきらきらと流れてくるものがあった。よく子猫が捨てられているので、子猫の死骸? と目を凝らしてみると一匹、いや二匹の蛇だった。驚く私を後目に蛇たちはしなやかに泳いで行く。水銀が…