2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P172

朝顔の裂けて大きく見ゆるかな 高校生の私は、宿題に困り果て母に教えてもらった松尾芭蕉の〈あさがほに我は飯くふ男かな〉という句を真似て〈朝顔に我は猫飼ふ女かな〉というのを作って提出した。 俳聖芭蕉の句を盗作? した罰があたったのか、俳句歴四十年…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P170

殻ごもるでで虫を手に法隆寺 奈良に着くとすぐに飛鳥寺、般若寺、唐招提寺を拝観してから法隆寺に立ち寄った。山門に入ると、いきなり男の子が「真珠みたいでしょ、あげるよ」と言いながら私の手に小さな蝸牛を乗せてくれた。殻にこもった主は触覚や顔さえ見…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P168

麦笛や野に坐す吾はこはれもの 三十四歳のとき、子宮筋腫の手術を受けた。麻酔から覚め、「もう子供を産めないんだ……」、そう思うと悲しかった。悲しみに追い討ちをかけるように同室の妊婦さんたちから「子供を産めないなんて、一人前の女性じゃない。壊れも…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P166

鶏糞の匂ひのなかのチューリップ 友人のお爺さんは、鶏を何十羽も飼っていて庭続きの畑には、肥料のための鶏糞を積みあげた小山があり、春になると、鶏糞の山の裾を取り巻くようにチューリップが咲いた。私が第二句集『火のいろに』を上梓したとき、入れ歯を…