2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ネクタイ 8

某デパートで販売していたエルメスのネクタイが、じつは偽物だったと判明して、物議をかもしたことがあった。 「偽物かもしれないけれど、偽物だってわかる前はみんな本物だとおもっていたわけだし、発覚しなければ本物だったんだよね」 砂糖部長が胸のネク…

ネクタイ 7

歴代首相のご意見番、Y氏がいわれた。 「のう、タカシマくん。ドミニクフランスを知らない男がおったよ。せっかくプレゼントしたのに、西陣織りだとばかりおもっとったそうだ。きくと、うちでは家内がなんでも選びますから、というんだ。そういう男を総理大…

ネクタイ 6

「せっかくだから、ネクタイでも貰おうかな」 展示会にみえた電通のT氏がいった。展示会のときは、どなたでも1割引だから、どうせ買うなら展示会に、という方が案外多かった。 展示会は4階のホールで催された。ふだん倉庫に出し切れないでしまってある在庫商…

ネクタイ 5

昭和50年代のはじめ、まだブランド品は高嶺の花だった。ブランド品よりもなによりも、舶来品と呼ばれた輸入品を買うこと自体、一般のサラリーマンには思いもよらないことだった。 その輸入品がなんとなく身近に感じられるようになってきたのには、景気の上昇…

ネクタイ 4

吉行淳之介先生は、新しいネクタイをしてバーかキャバレーに寄ったとき、あら、素敵なネクタイねえ、とホステスに褒められると、すぐにそのネクタイを外してしまう、といった。それはホステスに対して意地悪でするのではなくて、ネクタイが目立ってしまって…

ネクタイ 3

一枚の繪の竹田厳道氏は、イタリー製のミラショーンのネクタイがお好きだった。ミラショーンには2種類あったが、竹田氏のお好きなのは、もちろん高級なダブルフェースのほうだった。 ダブルフェースというのは、ご存じのように、独特の縫製で2枚の生地を1枚…

ネクタイ 2

山口瞳先生は、幅の細いネクタイがお好きだった。だから、磯村尚徳アナウンサーに代表される、衿の幅の広いスーツが一世を風靡したときには、相当に困惑されていた。スーツの衿幅に合わせて、ネクタイが金太郎の腹掛けほどに広くなったからである。 流行とい…