2006-10-01から1ヶ月間の記事一覧

福岡君

「武蔵野美大の福岡君(仮名)のうちは、九州でラブホテルを経営していた。 母上が手腕家で、ずいぶん繁盛していたらしい(余談だが、手腕家というのを高校のとき、He is a man of ability. というように習った。「彼は手腕家である」。彼女が手腕家の場合で…

笑い話

「ドイツ軍て呼ばれる男がいるんです、八王子に」 自動車外商に出て、東名高速を西に向かっているとき、アルバイトの福岡君(仮名)が突然いった。 「なにそれ?」 福岡君は、武蔵野美術大学の学生で、九州から出てきて八王子に下宿していた。 いや、ついい…

蜜野さんの話1

蜜野庄助氏(仮名)のお屋敷は、海神の広い水田に面した丘陵の端っこに建っていた。 南側に水田がひろがって見える、瀟酒な赤レンガの建物で、南向きのリビングルームの壁が、総ガラス張りのつくりになっていた。視界もひらけ、光がさんさんとふりそそぐ、明…

小話のような話・続

ガラス張りの屋根の家は、秋に出来上がったのでした。秋から冬にかけて、東京も夜はよく晴れて、都心でもきれいな星が見られました。 ところが、季節が移って、春から夏になると、ガラスの屋根はさながら温室のようでした。暑くていられないくらいです。直射…

小話のような話

赤坂の料亭の女将さんが、青山斎場の向かいの土地に家を建てました。都心であっても閑静な場所で、なるほど穴場といえるかもしれません。 優秀な建築家にまかせた家は、超現代的で、屋根がガラス張りで、寝ながら星が見えました。 「え? 料亭がガラス張りな…

雑談

銀座の旦那衆の集まりで、幹事の呉服屋さんの社長が挨拶に立つと、最後に手を締めることになりました。 三本締めというのは、ご承知のように「シャシャシャン、シャシャシャン、シャシャシャン、シャン」と手を打ちます。 シャシャシャンと3回打つのを3回繰…