2005-01-01から1ヶ月間の記事一覧

20世紀フォックス

帝国ホテルに泊まっているんだよ、と、その外国人はいいました。英会話の堪能な女子社員をあいだにはさんで、ぼくたちははなしていたのです。開店早々、晴れ上がっていた空がみるみる暗くなって、大粒の雨が落ちてきました。あわてて日除けを出して、通りを…

五味さんの車で

挨拶回りというのは、たとえば新年でしたらお年賀の挨拶、お盆が近くなればお中元、展示会の前には案内状を、お届けすることでした。もっとも、このうち、年賀と中元はごく限られた少数の顧客にしかしませんでしたから、タクシーでまわるのも1日2日あれば…

丸ビルとシャツ

内田百間の「東京日記」の第何話目かに丸ビルが消えてしまう話がある。ある日、見ると、そこに立っている筈の丸ビルが、忽然としてなくなっている。そして、その跡が原っぱになっており、水たまりにあめんぼが泳いでいる。通りすがりの人にきいても、要領の…

O青年 その2

時間前に銀座旭屋に行くと、O氏はもう来ておられて、レジのカウンターで本を袋に入れてもらっているのがみえた。数日前、O氏がはじめて上梓されたご著書をご恵贈たまわっていたので、ぼくは同じ本をもう一冊、昼休みにここで購入していた。お目にかかったら…

O青年 その1

吉行(淳之介)先生に、「変った種族研究」という本がある。昭和38年2月から「小説現代」に連載されて、39年12月にかけて発表された23篇が、翌年、単行本になっている。ぼくはまだ高校生だったから、いきつけの古本屋の棚でこの本をみたとき、なんだ…