2018-05-01から1ヶ月間の記事一覧

大木あまり「シリーズ自句自解 ベスト100」P164

雛よりもさびしき顔と言はれけり 雛は句材になりやすい。〈豆雛蕾のやうに着ぶくれて〉〈さからふを知らざる雛を納めけり〉〈ゆきずりの古き雛ゆゑ忘れ得ず〉。新作では〈夕闇の膝をくづさぬ雛かな〉〈風聞くは雛の歳月聞くごとし〉など私の思いを雛に託して…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P162

握りつぶすならその蝉殻を下さい この句、多くの人に温かい評をしていただいて幸せな出発ができた。いつの時代も弱者が犠牲になることに怒りを覚えて詠んだのだが、発表して良いものか迷った。以前に作った〈蝉よりも生き長らへて蝉の殻〉の句に比べ感傷的で…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P160

身をよぢる月の柱の守宮かな 荒(こう)ちゃんと名付けた子守宮は今夜も我が家のガラス窓にぴたりと吸いついて小さな虫を捕らえようと夢中だ。大きな守宮に邪険に小突かれても健気に自活する荒ちゃん。まだ、大きな守宮のように月光の差す柱に官能的に身をよ…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P158

逝く夏や魚の気性を玻璃ごしに しながわ水族館に行った。鮫やアザラシや古代魚など、ざっと見てからお目当の狼魚のところへ。口の大きさと獰猛さがうつぼ(魚へんに單)に似ているが、犬歯のある強大な歯が狼魚の特徴だ。水槽で涼しげに泳ぐ魚たちの中で狼魚…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P156

稲妻や辛子をいつも皿の隅 あるとき、いつも皿の隅に置かれる辛子の気持ってどんなだろう? と考えた。昔々、りんごの気持はよくわかる、という文句の歌があったけれど、たいていの人が皿の隅っこの辛子になど関心を示さないだろう。だが、そんな瑣末なこと…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P154

ひとりして萩のうねりをたのしめる 子供の頃から、ひとりが好きである。人間や動物や植物も好きだし、幸せなことに良い友達も沢山いる。もしかして、ひとりが好きなのではなく我儘で自分勝手なだけなのかもしれない。この句、ひとりで吟行したとき、白い萩を…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P152

かりそめの踊いつしかひたむきに あれは、盆踊の夜。町会長さんから「美人の奥さん、櫓の上で踊って下さいよ」といきなり言われた。美人と言われ、少しその気になったが、盆踊は初めて。原っぱで踊る輪の中に入れてもらいぎこちなく踊っていたが、手捌きを覚…