大木あまり「シリーズ自句自解 ベスト100」P164

 雛よりもさびしき顔と言はれけり


 雛は句材になりやすい。〈豆雛蕾のやうに着ぶくれて〉〈さからふを知らざる雛を納めけり〉〈ゆきずりの古き雛ゆゑ忘れ得ず〉。新作では〈夕闇の膝をくづさぬ雛かな〉〈風聞くは雛の歳月聞くごとし〉など私の思いを雛に託している。昔、男性から雛より淋しい顔をしている、と言われたことがあった。誉め言葉だと思っていたのだけれど、もしかして顔の印象が薄いってこと? (『星涼』)