2011-04-01から1ヶ月間の記事一覧

銀座百点 号外49

しかし、ぼくが田村隆一の詩にふれるのは、もっとずっとあとのことだ。 丸谷才一が1973年1月25日、朝日新聞夕刊の文芸時評で田村隆一をとりあげる。ぼくは、これを読んでいない。うちは読売新聞をとっていたからだ。 1975年4月、丸谷さんが連載した文芸時評…

銀座百点 号外48

「もう一軒行きましょう。すぐそこだから」 もう一軒のバーへ行くまでに寿司屋へ寄る。トロを少したべて、 「ぼく田村です。また来ます」 と言って寿司屋を出る。実に優しい。 Qという看板のあるバーの扉をあけて、首だけ入れて、 「ママさん、いる?」 マダ…

銀座百点 号外47

詩人田村隆一のことは、山口瞳先生の「江分利満氏の華麗な生活」(1963年・文藝春秋新社刊)ではじめて知った。1968年ころのことである。 「江分利満氏の華麗な生活」は、10篇の短編からなる連作小説である。小説だが、エッセイのような風味がある。その1篇…

銀座百点 号外46

「連作詩『5分前』はその当時の作品。」と、長谷川郁夫の「解説エッセイ」はつづく。 やっと部屋が 部屋らしくなった 窓には白いレースのカーテン 小さな庭には秋草の花 朝の光り 午後の夢 夜の沈黙 それから 眠ることが愉しくなった シェリーを一杯飲んで …

銀座百点 号外45

しかし、田村さんは、フジヤ・マツムラにはみえなかった。それどころか、数年後、稲村ヶ崎からも忽然と消えてしまったのだった。 田村さんのお宅に矢村君がうかがったとき、絵描きだという若い女性が玄関に現れて、矢村君が持参した九州のお酒をうやうやしく…