2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P36

ビーナスの影は闘志よ鳥帰る 美大生のとき、上野の西洋美術館でヴィーナスを観たことがある。ライトに照らしだされたヴィーナス像は、凛々しく気品があった。艶麗さとたくましさを兼ね備えた女神。その影に目をやると古代の剣士のようだった。最終日だったの…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P34

岬暮れ青を恥ぢらふ猫じやらし 枯れ一色の岬は、夏や秋と違って寂寞たる趣がある。枯淡の世界の中で風に吹かれる猫じゃらしたち。一本だけ青いのを発見した。まるで枯れずにいることを恥じているように揺れている。なんだか、いつまでも青くさい私自身を見て…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P32

米喰はぬ日は怒りがち雲の峰 炊きたてのふっくらした御飯が好きだ。お米を食べない日は、いらいらして怒りっぽい。そのことを素直に詠んだ。自分の思いを詠む場合は季語に細心の注意を払っている。「雲の峰」は飛躍しすぎるかもしれないが句柄を大きくするた…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P30

寒卵は尼の静けさ岬暮る 俳句の仲間と伊豆に行ったときの作。一日、冬の海を吟行し、いざ帰ろうとしたとき岩屋を発見。そこには小さな祠があり、コップ一杯のお酒と卵が一つ供えてあった。あたりは暮れかかっていたが薄闇の中のほの白い卵は、尼様が静かに座…