大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P34

 岬暮れ青を恥ぢらふ猫じやらし


 枯れ一色の岬は、夏や秋と違って寂寞たる趣がある。枯淡の世界の中で風に吹かれる猫じゃらしたち。一本だけ青いのを発見した。まるで枯れずにいることを恥じているように揺れている。なんだか、いつまでも青くさい私自身を見ているようだった。
 穂で猫をじゃらすから、猫じゃらしと呼ばれるエノコロ草。我が愛猫たちは、穂にじゃれて遊んでいたかと思うとすぐに飽きてしまう。飼主に似ているのだ。
 (『山の夢』)