2017-01-01から1ヶ月間の記事一覧
rain maker 鎌倉の駅を降りると小雨。 濡れながら谷戸を歩く。 こぶしの花が雨に煙ぶっている。 夜、こぶしの花が 蝶となって吹雪くんだ。 一緒に見よう と男が囁いたことがあった。 日本脱出の 夢ばかり 見ている男だった。 隧道に入ると 母の胎内さながら …
老醜 二十歳のわたしは 悲しみを水栽培の アネモネのように育てていた。 三十歳のわたしは 不自由さを虫のように 心の地下室に飼っていた。 歳月はいろいろなものを 飼いならす。 わたし自身まで。 四十歳をすぎたわたしは 小さな怪物を飼っている。 この怪…
流星 渚に打ちあげられた 荒布が濡れている。 (註:あらめ) 愛しあった あとのように 流木は男の匂い。 貝殻は女の匂い。 流星は死人の匂い。 男と女。 生と死。 波に打たれても 溺れることのない浮標。 (註:ぶい) 愛に溺れることのない心。 交わること…
姉へ ひなげしの 花束に 致死量の 毒があるなら ひなげしの サラダを食べて 死ぬのもいい。 食べてしまいたいほど 愛する あなたを 失ってしまったから。 思想も 理想も 宗教も 倫理もない 二十五歳の 女にできることは 愛をコピーすることだけ。
油絵科C組 男のモデルを はじめて描いた。 つい わたしの 視線はモデルの股間にいってしまう。 若い男のものは 水仙か菖蒲の 蕾みたいだと 思っていたのに。 タラコみたい。 本で見た地球を担いで いる男のものは 無花果の葉っぱから はみだしそうに 生き生…
沈黙 あなたに逢ったのは ペット・ショップだった。 あなたは ヒマラヤンに 見惚れていた。 猫が好きですか と言う僕の質問に 答えず 薄暗いところで なくことも忘れている 小鳥たちの方へ 行ってしまった。 僕は見た。 あなたがそっと籠の 小鳥たちを 逃が…
my room わたしの部屋は 黒猫のなかにある。 窓は猫の二つの眼。 ベッドは ピンクのやわらかい舌。 鏡は猫のハート。 わたしは黒猫になって歩く。 黒猫になって恋する。 黒猫になって攻撃する。 黒猫の爪はわたしの武器。 誰も侵入できない my room でも世界…