2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

百物語

ああ、百物語ね。もちろん知ってますよ。粋狂で催したことがあります。 ほら、鴎外の小説にもあるでしょう、向島あたりの金持の別荘で百物語が開かれる話が。あれを真似たんです。当然、場所は向島。割合、凝るほうで。といっても、別荘なんてないから、料亭…

着信アリ

綿貫君が花屋の店舗を探しているときだったとおもうが、九段の千鳥ヶ淵沿いの道を雨の夜に歩いたことがあった。 あの道は、いまではどうだか知らないが、夜になると、距離をおいてポツンポツンと灯る電灯しかなくて、それも電灯の真下ばかり照らしていたから…

夜の電話

中村裕次郎から電話がきた。20年ぶりのことである。 中村裕次郎は、中学3年のとき同じクラスだった。当時、「中村」といえば、すぐさま「錦之助」と答えが返ってきた。「裕次郎」は、もちろん「石原裕次郎」である。どちらもまだ人気絶頂の時代だった。中村…

コート 23

税理士の花器沼先生とばったり出くわした。日曜日の銀座である。 「あんた、タカシマ君。銀座に勤めてるのに、休みの日にも銀座ブラブラしてるのかよ。変わってるねー」(尻上がりの茨城弁) 「そういう先生だって、毎日、銀座の事務所に通ってらっしゃるの…

コート 22

山口瞳先生が正装に近い服装をされるとき、決まって着用されたのが黒のコートだった。たぶん、カシミヤで、肩の四角いチェスターフィールドコートと呼ばれるコートだったとおもう。 チェスターフィールドというのは、19世紀のイギリスの伯爵の名前に由来して…