2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P138

春の波みて献立のきまりけり 無性に海が見たくなると横浜に行き水上バスに乗る。船に乗ったときの爽快な気分と開放感がたまらない。きっと日常から非日常の世界に連れて行ってくれるからだろう。のんびりと波と戯れる鷗。沖に碇泊する白い巨船。この句は、船…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P136

悲しみの牛車のごとく来たる春 寒い冬から解放される春。木々が芽吹き生きものの総てが勢いを取りもどす春なのに、ある事で悲しみから立ち上がれずにいた。 そんなとき、俳人の木村定生さんが「だらーんとしてればいいんですよ」と言ってくれた。そう、牛車…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P134

涅槃図に加へてみたきあめふらし 城ヶ島の磯で、打ちあげられた雨降らしを初めて見たとき衝撃を受けた。暗紫色の形と感触が牛のレバーに似ている珍しい生きもの。巻貝の仲間とは思えなかったが妙に親近感を抱いた。自分では海に帰ることもできない海降らしを…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P132

あかき火となりゆく藁や昼の虫 藁を燃やすと瞬く間に美しい火となった。その炎に応えるように色々な虫が庭で鳴いている。虫時雨を実感するのはこういうときだ。ときおり木犀の香がして晴れ渡る空一面に羊雲。一匹ぐらい落ちてくれば一緒に遊べるのに。炎の花…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P130

野村万蔵蹴つて袴の涼しけれ 野村万蔵の狂言を観たことも彼の麻の袴が涼しげだったことも覚えている。揚句の他に〈羅のふはりふはりと名のりけり〉〈狂言や扇ひとつを鋸として〉〈狂言や帷子(かたびら)に皺ふやしつつ〉などの句も作っているのだ。それなの…