2006-07-01から1ヶ月間の記事一覧

はじめてのおつかい

入社してすぐの頃、はじめてのおつかいが集金だった。 鎌崎店長が、ちょっと集金してきてもらおうか、といってぼくをよんだ。それで、住所を名簿からひろって、地図をひろげてみた。地下鉄広尾駅が近そうで、日比谷線なら通勤定期が使えるから、ぼくが行くの…

ネクタイの柄

ネクタイの柄というのもいろいろあるが、趣味を反映して、どうしてもこれでなくてはいやだという場合がある。 京都の和菓子屋さんのご主人は、いっとき、象の柄に凝っていた。象なんかいくらでもありそうにおもうが、いざ頼まれて探すとなると、これが全然な…

キューちゃんのご両親

吉行淳之介著「贋食物誌」(昭和49年10月新潮社刊)は、目次を見ると食物の名が列記されているものの、実際にそのページをめくってみても、食物のこととはかけ離れていることのほうが多い。しかし、ちゃんとその食物に沿った話が載っていることもあり、「豚…

キューちゃん

綿貫君がロールスロイスを見せにきたとき(註、04-8-22参照)、おとなりのマルボロの金森さんが、とつぜん入り口から顔を出していった。 「うちのキューちゃんのお父さんも、ロールスロイス乗ってるよ。あれほどクラシックじゃないけど」 キューちゃんという…

やんごとなき方?

出張から帰ると、ひとり、女子社員が入社していた。 有金君にきくと、目白のG院の国文を出て、まだお勤めをしたことがない人のようだった。 「いとやんごとなきお方なのかね?」 「さあ、ぼくにはよくわかりませんけど」(有金君は、美人にしか関心がない) …

カン違い

O氏のお仕事は貿易関係で、巨万の富を蓄えておられるという話だった。レマン湖のほとりに別荘があり、担当の鎌崎店長に夏休みに泊まりにこいといってくれた。箱根あたりじゃあるまいし、はいそうですかといって簡単に泊まりに行けるわけがない、と鎌崎店長は…