2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P82

寒月下あにいもうとのやうに寝て 美大生のとき、ギリシャ神話を題材にした月と狩猟の女神ダイアナの絵を模写しながら、兄のアポロとダイアナは宇宙の片隅で、星座のベッドで抱き合い眠りながら、それぞれ違う夢を見たのでは? と空想した。幼稚な空想だが、…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P80

夫にして悪友なりし榾を焚く 兼題に出た「夫」で苦吟していた。農家でもらった桜の根榾を庭で燃やしながら想を練った。その頃の夫は、無愛想で辛辣で頑固。ニヒルな風貌からか、知人達に「眠狂四郎」と呼ばれていた。それで俳味を出すために反語的に「悪友」…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P78

猪鍋や大山の闇待つたなし 石田勝彦先生と結社「泉」の方々と大山周辺を吟行した。名物の豆腐料理が食べられると期待したものの、一行はケーブルカーで阿夫利神社へ直行。社務所の裏で秘かに豆腐のアイスクリームを食べようとしたら、「神の鹿を詠みなさい」…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P76

ぼろ市や空一枚を使ひけり 東京世田谷のぼろ市を吟行したときの作。第二句集『火のいろに』を上梓することが決まり、頻繁に吟行をした。無所属で俳句をやっている私を心配した石田勝彦先生がたびたび吟行に誘って下さった。 このときも、先生のお伴をして古…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P74

がちやがちやの森を壊してゐたりけり いろいろな虫の音があふれている夜の森で、ひときわ個性的なのが、がちゃがちゃとも呼ばれる轡虫。そのがちゃがちゃと賑やかでやかましい鳴き声が最高潮に達すると、森が壊れるのでは、と思ってしまう。それは轡虫の生態…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P72

遠雷や人を待たして人待たず 老母や猫の世話をしていて、待ち合せの時間にたびたび遅れることがあった。遅刻するだけでも迷惑なのに、吟行の最中に野良猫と遊んだり気儘な行動をするので、俳句仲間はたまったものではない。それでいて、待つとなると三十分が…