大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P82

 寒月下あにいもうとのやうに寝て


 美大生のとき、ギリシャ神話を題材にした月と狩猟の女神ダイアナの絵を模写しながら、兄のアポロとダイアナは宇宙の片隅で、星座のベッドで抱き合い眠りながら、それぞれ違う夢を見たのでは? と空想した。幼稚な空想だが、典雅で凛々しいアポロとダイアナの禁じられた愛こそ理想だと思った。
 ダイアナの絵の模写が未完だ、という思いをずっと引き摺っていたので、究極の愛のかたちを俳句で表現してみた。 (『火のいろに』)