2004-09-01から1ヶ月間の記事一覧

砂糖部長

まだ綿貫君が勤めていたころだから、昭和50年代のなかごろだったろう。その夜は、砂糖部長と綿貫君と、それからもうひとりだれか女性が残りの当番だった。 砂糖部長は、名前と大違いで、シュガーレスな上司だった。ぼくは、入社の面接のとき、砂糖部長と社長…

本屋で

銀座の一日で、いちばん好きな時間というのは、ひとそれぞれずいぶん違っているでしょう。ぼくは、そうですね、残りの当番のひとにさよならをいって、タイムカードを押して街にでると、まだ空はなんとなくあかるくて、それでいてネオンや灯りがともりはじめ…

Y氏とぼく

入り口から二人の男がはいってきたとき、ぼくは、ヤバイかな、とおもった。 Y氏が椅子にかけられて、ご家族を待っておられるときだった。男たちは、黒っぽいスーツにネクタイをしめてるが、見るからに危険な感じがあって、二三歩はいって立ちどまった。入り…

ぼくの夏休み

それは、8月はじめ、繁忙期も一段落して、ようやく夏休みにはいった朝のことです。数年まえから、夏休みの計画を立てることを、あきらめていました。なぜって、せっかく旅行にでかけようと、ちゃんとはやくから予約をいれて、準備をすべてすませて、いざ出発…

シティー・ホッパー

シティー・ホッパーとは、町から町へとんであるくヒコーキのことをいうらしい(田中小実昌著「ふらふら」光文社文庫)。バーからバーへはしごしてあるく人を、バー・ホッパーと言うんだそうだ、とも書いてある。だらしない呑み助が、こうよばれると、ぐんと…

シャツ職人の加藤さん

大井の加藤さんの話をします。加藤さんは、シャツの職人さんでした。戦前のことですが、加藤さんのお父さんは、競馬の騎手の帽子をつくる人でした。しかし、息子にはもっと将来性のある仕事につかせたいと考えました。騎手の数には、限りがあります。けれど…