2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧

大木あまり詩画集「風を聴く木」『2-アトリエ』

アトリエ ひまわりの巨大な 頭ばかり 描いていた彼が いつからか わたしを描きだした。 わたしの身体を キャンバスにして。 好き勝手に 描きなぐり できた傑作といえば 「堕落」と題した マリア像。

大木あまり詩画集「風を聴く木」『2-すみれ草』

すみれ草 恋の話ばかり 女はしたがる。 未来のことばかり 男は話す。 シェリー酒の壜は もうからっぽ。 アンティークな鏡に 夜が映っている。 わたしといえば 杉の根っこに 凍えて 咲いていた すみれ草の話ばかり。

大木あまり詩画集「風を聴く木」『2-遺書』

遺書 ある夕暮れ。 ひと塊の氷となって わたしは死んでいるでしょう。 生きるために 必要のない 悲しみばかり 厚いコートのように 着ていました。 やっとコートが脱げます。 わたしにも春がきたのです。 なんと感傷的な夕暮れ。 最後に見るものは みんなきれ…

大木あまり詩画集「風を聴く木」『1-風を聴く木』

風を聴く木 アポリネールは 猫と理解しあえる 友達がいれば 幸福だといった。 しかし 幸福の似合わぬ 女は、愛を知ると いつも逃げる。 逃亡者のように。 逃げて 逃げて 疲れ果てて 振り向くと 樹海だった。 女には 吹く風が 水や炎の 音に聴こえた。 やっと…

大木あまり詩画集「風を聴く木」『1-野の梅』

野の梅 野の梅が散る。 アフリカでは 飢えた子らが 梅の花の匂いも知らず 乾いた頰に 蝿を鋲のように 貼りつけ 見つめ合っているだろう。 遊びを忘れ 指をしゃぶってばかり いる子らのそばに もう肉体とはいえない 父や母が 枯木となって 佇ちすくんでいるだ…