2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧

大木あまり詩画集「雨を聴く木」『3-窓』

窓 マチスは窓を 象徴に愛を描いた。 ある詩人は 窓こそ 自然を飾る 額縁といい 窓こそ 真実の 名画を見せて くれるといった。 死者さえも 小さな棺の 窓を持っている。 小鳥となって はばたくために。 わたしの窓は きれいなものばかり 見せてはくれない。 …

大木あまり詩画集「風を聴く木」『3-夢を見る木』

夢を見る木 あなたとわたしは この地球に ちらばった 種だった。 あなたは わたしより 先に生まれても 後に生れても いけない人だった。 あなたとわたしは 同じ時代の さびしい共犯者で なくてはならなかった。 それなのに めぐり逢う季節を どこで間違えて …

大木あまり詩画集「風を聴く木」『3-花冷え』

花冷え あの日のように 桜が吹雪いている。 解体される この家は廃屋の 荒々しさ。 落花が鱗となって 屋根に貼りついている。 あの日、 なかなか出てこぬ あのひとを 家の外で待っていた。 桜は子供のわたしを 攫うように 隣のK荘から降ってきた。 素足で穿…

大木あまり詩画集「風を聴く木」『3-薄氷』

薄氷 刺客になれない 主婦は せいぜい大根を 切るのが関の山。 日常に疲れた 主婦を大根は 切ってくれない。 輪切りの大根には 薄氷のはじらいがある。 それは人間が 日々失ってゆくもの。 そのことを忘れぬため 大根を切らずにはいられない。 夫より友達よ…