2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧
窓 マチスは窓を 象徴に愛を描いた。 ある詩人は 窓こそ 自然を飾る 額縁といい 窓こそ 真実の 名画を見せて くれるといった。 死者さえも 小さな棺の 窓を持っている。 小鳥となって はばたくために。 わたしの窓は きれいなものばかり 見せてはくれない。 …
夢を見る木 あなたとわたしは この地球に ちらばった 種だった。 あなたは わたしより 先に生まれても 後に生れても いけない人だった。 あなたとわたしは 同じ時代の さびしい共犯者で なくてはならなかった。 それなのに めぐり逢う季節を どこで間違えて …
花冷え あの日のように 桜が吹雪いている。 解体される この家は廃屋の 荒々しさ。 落花が鱗となって 屋根に貼りついている。 あの日、 なかなか出てこぬ あのひとを 家の外で待っていた。 桜は子供のわたしを 攫うように 隣のK荘から降ってきた。 素足で穿…
薄氷 刺客になれない 主婦は せいぜい大根を 切るのが関の山。 日常に疲れた 主婦を大根は 切ってくれない。 輪切りの大根には 薄氷のはじらいがある。 それは人間が 日々失ってゆくもの。 そのことを忘れぬため 大根を切らずにはいられない。 夫より友達よ…