2006-09-01から1ヶ月間の記事一覧

続・田舎の道

蜜野庄助氏(仮名)が、海外旅行に行くけど、半ダース、いまからシャツを頼んでも間に合うかね、ときいた。 ぼくは、カレンダーを見て、なんとかしましょう、と安請け合いをした。そして、蜜野氏が帰ったあと、さっそく職人さんに確認をとり、期日までには仕…

田舎の道

さっきからずっと田んぼの中を歩いている。向こうのほうに岡のような台地がみえるが、そこへ上がってゆく道がない。歩いている一本道から、台地に向かって、いくらでもあぜ道が伸びてはいるが、どれも台地のへりにぶつかって、そこで消えてしまっている。田…

ある日の昼飯2

ぼくはもう、ぜんぜん食欲がなくなっていた。せっかくのカツ丼が、とてつもなく重く見えた。カツの切れは、口に入れても、なかなかのどにおりてゆかなかった。 すぐに蜜野氏のざるきしめんがきて、蜜野氏は音を立ててきしめんを吸い上げはじめた。太鼓腹がテ…

ある日の昼飯

その日は遅番だったので、銀座に来てから昼飯をどうしようかと考えた。遅番は、タイムカードを午後1時20分までに押せばよい。時計を見ると、まだ12時前だった。簡単に食事を済まして、ロバの耳でまずいコーヒーを飲んでゆくくらいの時間はある。そこで、数寄…

あの頃の車事情

昭和52年にはじめて見たときの花器沼先生の車は、グレーのトヨタのクラウンだった。 先生は、車はじっくりと乗るタイプのようで、20年のあいだに3台しか乗り換えなかった。 2番目は、濃紺のBMW。3番目は鶯色のベンツである。 オイルショックからバブルがはじ…

続々々 花器沼先生

花器沼先生は、大蔵省から京橋税務署に出向にきて、それから税理士になった。中堅で割合業績のよい都内の優良企業を何社かと、銀座を中心に中小の会社をけっこうたくさん顧客にもっていた。経理を見るだけのバーやキャバレーももちろんあって、本人の弁では…