2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

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台風の影響で雨の降った朝、会社に向かって築地本願寺の境内を歩いてゆくと、ニャンニャンがいた。梅雨で雨の日がつづいたので、会うのは久しぶりだった。ニャンニャンは、雨に濡れたコンクリートにしゃがんで毛づくろいをしていた。 ニャンニャンは、おもし…

綴じ込みページ 猫-216

ミーヤの首輪は、どこかに引っかかると外れるようにできている。首を締めてはたいへんだからね。首輪の生地は、この前は紫の緞子、いましているのは生成りの麻、そしてつぎに用意したのは紺の紬である。一応、季節に合わせている。なんといっても女の子だか…

綴じ込みページ 猫-215

一九九六年三月二十五日初版第一刷発行の「吉岡実全詩集」が本棚にある。うれしいことに活版印刷である。限定版ではないが、初版は少部数しか発行されなかっただろうから、限定版といっしょである。だいいち、吉岡実といっても、どれだけのひとが知っている…

綴じ込みページ 猫-214

話は多少旧聞。 ぼくは、夜はほとんど外食だが、面倒なのでいつも同じ店に行くことにしている。 昔から駅の近くにあった中華食堂が、十か月かけて新装開店した。モルタルの古臭い建物で、せいぜい二階までだったものが、いざ再開してみると、ちょっとしたマ…

綴じ込みぺージ 猫-213

宮田毬栄「忘れられた詩人の伝記」(中央公論新社)には、詩人・大木惇夫の詩がたくさん掲載されている。ほとんど全詩が収録されているのかもしれない。オビに「起伏だらけの詩人の一生を、全詩作品と時の流れを通して娘が描き出す、画期的労作。」とあるか…