2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ネクタイ

その人の名前は、仮に陸軍としておこう。終戦まであった陸軍士官学校の出身者だったからである。 陸軍氏は、ある日、ふらりと入ってこられた。そして、入り口のところに立っていた古村さんに、 「ネクタイを選んでください」 と、声をかけた。 見ると、手に…

女性に男物?

山口瞳先生は律義な方で、いつも世話になっている各社の担当編集者と、日頃親交のある友人たちにお中元とお歳暮を欠かさなかった。 ほとんどが男性だが、あるとき、名前に「子」がつく方が2名になった。 お一方は、山口先生かかりつけの荻窪の病院の女医さん…

ゴムの木 最終章

商船三井を辞めて1週間後、ぼくは面接を受けるために、日経新聞社にいました。以前、フェリー部でいっしょになった石井さんが、アルバイトに困ったら行ってみるといいよ、と教えてくれたことがあったからです。 石井さんは、東京芸術大学の大学院生でしたが…

ゴムの木 17

昭和52年2月20日朝、大松さんは逝去されました。最後の肩書きは、代表取締役・専務取締役とあります。 数年前から、オイルショックが日本中を席巻していました。商船三井の京橋支社も、それと無縁ではいられませんでした。嘱託やアルバイトは、次々に会社を…

ゴムの木 16

ぼくは、フェリー部の一員として、3年間過ごしました。大松さんのすすめもあって、ゆくゆくは正社員になってもいいとおもうようになっていました。その分、あれほど身近だった奄美大島の図書館は、しだいにぼくから遠のいていき、シジミほどの大きさで南の海…