2011-12-01から1ヶ月間の記事一覧

銀座百点 号外94

まだ、「吉行淳之介エピソード集」のつづきである。 安岡章太郎の文章によると、吉行はM・Mとのデートの為に、オースチンを買ったことになっている。ただ、この恋愛について、大久保房男(元「群像」編集長)の次の文が、印象強く残っている。 「吉行氏とA女…

銀座百点 号外93

車の次は、M・Mのことも書かなければならない。彼女のことは、「闇のなかの祝祭」「赤い歳月」「湿った空乾いた空」などの吉行作品を読んだ方ならご存じの筈。そして、三十六年、三月から九月末までかかって書きあげた「闇のなかの祝祭」が、誌上を飾った時…

銀座百点 号外92

三十四年の春、吉行は車の免許を取った。二十日ぐらいでとれたというから、かなりいい線いっていたことになる。 「吉行淳之介の研究」に収められている「吉行淳之介エピソード集」(山本容朗編)にこういう記述がある。 最初、オースチンの新車同様というヤ…

銀座百点 号外91

「私の文学放浪」のなかに、吉行淳之介の創作の秘密が書かれているので引用する。創作の秘密であるとともに、家庭を顧みなくなる作家の性分が語られている。 文学の世界への入門書として母親の与えてくれた書物は、石坂洋次郎『美しい暦』と阿部知二『朝霧』…

銀座百点 号外90

「年譜」の「一九五九年(昭和三四年)三五歳」の最後に、「この年、娘麻子生まれる。」とある。 吉行淳之介にとって、運命の人といってもいいかもしれない宮城まり子と出会い、恋に落ち、離れ難くなったときに子どもが生まれたのは、悲劇のような喜劇のよう…