銀座百点 号外94

 まだ、「吉行淳之介エピソード集」のつづきである。


 安岡章太郎の文章によると、吉行はM・Mとのデートの為に、オースチンを買ったことになっている。ただ、この恋愛について、大久保房男(元「群像」編集長)の次の文が、印象強く残っている。
「吉行氏とA女B女の関係はバレーボールに似ていた。見物人には吉行氏はボールとなって、軽々とA女のコート、B女のコートを渡り歩いているようだが、私にはA女のところへ行ってもどづかれ、B女のところへ行ってもどづかれて、あてどなく宙を舞っているように見えた」
(つづく)