2005-09-01から1ヶ月間の記事一覧

日本橋支店のあるできごと

有金君は、日本橋高島屋の2階特選にあったフジヤ・マツムラコーナー(日本橋支店とよばれていた)の店長として、何年かのあいだ出向していた。そのうちに、彼は非常に優秀だったので、イタリアブランドのヘルノの総代理店にいつの間にか眼をつけられ、ヘッド…

続々 値札付けのおばさん

3人目の値札付けのおばさんは、豌豆さんだった。 豌豆さんは、結婚してからずっと主婦をやってきて、結婚前にも勤めたことがなかったから、50歳にしてはじめて仕事というものについた。 二人の子どもが大きくなって、ぜんぜん手がかからなくなってみると、な…

続・値札付けのおばさん

川中島さんのあとにきた値札付けのおばさんは、斜塔さんといった。 斜塔さんは、大学を卒業してからずっと、NHKでアルバイトをしていた。 何十年もNHKでアルバイトができるものかわからないが、斜塔さんの話のなかに木村さんとか森本さんとかいう名前がでて…

値札付けのおばさん

値札付けのおばさんの話をしよう。 ぼくが入社したときには、川中島さんというおばさんが値札付けをしていた。 値札は、機械で印刷(というか、印字)していたが、品番や記号を糸の付いた小さな(3.5×4.5センチくらい)紙の札のなかに打ち込むため、活字もそ…

美食家のA氏

A氏は、指揮者で美食家だった。 ぼくは、指揮者といえば、カラヤンと小沢征爾しか知らない。 同様に、美食家というのは、レックス・スタウトのミステリに登場する、「蘭とビールと美食をこよなく愛する巨漢探偵ネロ・ウルフ」しか知らない。いや、こちらのほ…

K氏とNさん

Nさんは、もと看護婦さんをしていた(お客様だから、N様、というべきだが、うちうちでは親しみをこめて「さん付け」していた。山口瞳先生を、かげで「瞳さん」とおよびしていたのと同じように)。 華麗な男性遍歴があるという噂で、年齢のわりに白いつやつや…