2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

号外

きょうは、ぼくの誕生日だ。むかしは十歳サバ読めたが、昨今は齢相応か、ときには年上に見られるようになった。しかし、いつまでも二十七歳でいられるわけもないが、気分としてはいまだにそのあたりを漂っている。 俳句のお仲間から、誕生祝いのご挨拶句をい…

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吉行淳之介の「ミスター・ベンソン」、承前。 予定の仕事を終えて家に帰ってみると、犬は灰になって素木の四角い箱を白い布で包んだものの中にいた。 「庭の隅に埋めてやりましょう」 同居人が言う。 「うん、そのうち」 そういう作業は気がすすまないので、…

綴じ込みページ 猫-111

吉行淳之介の「ミスター・ベンソン」は、さらに続く。 私が窓を開けると、顎をじかに地面にくっつけて平べったくなっていた犬が立上がって近寄ってくると、一声吠えた。それは、友好のしるしである。しかし、その吠え声が妙に嗄れて、無理に声を押し出してい…

綴じ込みページ 猫-110

さて、「ミスター・ベンソン」である。 音楽家ばかり代々出る家系とか、犯罪者ばかりの家系の図を見たことがある。一見、トーナメント形式のゲームの組合わせに似ている。 一番上の欄に、現在の犬の正式な名前がタイプで印されていて、『ベンソン・オブ・ア…

綴じ込みページ 猫-109

まだまだ、「ミスター・ベンソン」。 予想もしていなかったことを聞かされた気分で、青年と別れると、窓から覗いてみた。黒い土の上に腹這いになった犬は、いつものように前肢に顎を載せて、いかにも無精たらしい恰好をしている。 窓ガラスを引開けると、犬…