2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

銀座百点 号外77

私は原稿用紙に文字を書き並べることが、嫌いである。世の中には、「私は筆無精で」と言うと、冗談を言っているとおもう人が多い。こういう人たちは、文学というものが分っていないのであって、しかし、そういう人たちが大部分である。したがって、自分の本…

銀座百点 号外76

こういうことすべてが、今にしておもえば私の文学に微妙につながっている。しかし私は、旧制高校に入るまで芸術という分野がこの世に存在していることを知らなかった。異常のようだが嘘のないところである。むしろ、文庫本を読んだりする中学生を軽蔑し、高…

銀座百点 号外75

私の父は新興芸術派の作家(一時期、二十二から五歳のころは流行作家と呼んでもよかったようだ)だったが、早く筆を折って(行き詰まったのだとおもう)蔵書を全部売払い、およそ家庭には文学的雰囲気はなかった。稀にしか帰宅せず、そのときは近所に下宿し…

銀座百点 号外74

講談社版「吉行淳之介全集」全八巻は、昭和四十六年に刊行が開始された。そして、最終巻の第八巻は、翌四十七年二月二十日に発行されている。ぼくが探していた吉行淳之介の文章が、ここに収録されていた。 それは、「断片的に」と題するごく短い文章である。…

銀座百点 号外73

「吉行淳之介の研究」の目次を見てみると、「1 吉行文学についての考察」「2 吉行淳之介という人間」「3 吉行淳之介エピソード集」「4 作家に聞く…文学創造の秘密」の四つに分かれている。読んで面白くて、しかも役に立つのは、「エピソード集」である。ぼく…

銀座百点 号外72

昭和五十三年発行の「吉行淳之介の研究」(実業之日本社刊)がようやく見つかった。最近は、ちょっと調べたいとおもう本が、なかなか見つからなくて困る。 この本は、吉行淳之介についてなにか述べたいとおもったときには、非常に便利な本である。早速、ぼく…