2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

綴じ込みページ 猫-208

オークションで落札したパナマハットを、はじめてかぶって出かけた。 別に麦わら帽子でもよかったのだが、ぼくは頭のサイズが小さくて、なかなか合うものがない。それで、結局またオークションに頼った。高級なものから手軽なものまで、いろいろ出品されてい…

綴じ込みページ 猫-207

家猫で、一年中空調のきいた室内に暮らしていていると、抜け毛がめっきり減るものらしい。らしい、と書いたのは自信が持てないからで、実際、ぼくの猫は毎日ブラッシングしているけれど、最初の年のようには毛がとれなくなっている。ダーウインの進化論で説…

綴じ込みページ 猫-206

たまたま休日にお会いしたわさびさんに(その日の格好を)、 「売れない芸人みたいな服装ね」 といわれた。 「売れない芸人、ですかね」 と口のなかでもぐもぐいったが、じつはちょっとうれしかった。平成元年に六十歳でなくなったある作家の服装を思い出し…

綴じ込みページ 猫-205

吾が妻という橋渡る五月かな 貨物船 貨物船というのは、詩人の故・辻征夫の俳号。「俳諧辻詩集」所収の「吾妻橋」という題名の詩の冒頭にこの句があげられている。 枕橋を過ぎ 長命寺の裏を通って 昭和二十三年三月十日にも焼けなかった 路地の迷路に 男は消…

綴じ込みページ 猫-204

ぼくは、昭和五十二年にカミサンと出会った。そして、その年、カミサンの姪が大阪の高石市羽衣で生まれた。すべて、偶然である。姪は、長じて銀行員になり、そこそこキャリアとなって、いまだ独身である。会社はおっさんばかりで、恋愛対象なんていてへん、…

綴じ込みページ 猫-203

昭和五十二年七月十八日に、ぼくはフジヤ・マツムラに入社した。アルバイトでもよかったのだが、正社員だった。 九月に、大阪に出張することになった。なんば高島屋で開催される大きな催事の準備のために、ほかの社員より一週間早く現地に入って、タクシーで…

綴じ込みページ 猫-202

英王女の名前が、「シャーロット・エリザベス・ダイアナ」に決定した。なんだかずいぶんと気をつかった名前で、ウィリアム王子夫妻の人柄がしのばれるようである。 王女は、五月二日生まれ。干支は、乙未である。四月二日生まれだったら、ミーヤと同じだった…

綴じ込みページ 猫-201

ミーヤがきて四年たつうちに、鰹節の味も、じゃこの味も覚えた。海苔も食べたし、せんべいを舐めることも経験した(食べさせないでちょっと舐めさせるだけ。猫が舐めたせんべいはぼくが食べてしまう)。 ビニール袋に入った、調理された猫用のカツオの身を、…