2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ゴムの木 15

社報には、きみは好きなものを載せていい、といわれていたので、「男たち パブ」と題するショート・ショートのようなものを寄せたこともありました。 ♪♪♪ー酒がすきかって...嫌いだね。飲まずにすませられたらって、おれはいつもおもっているよ、と彼はいっ…

ゴムの木 14

大松さんに詩らしくない詩といわれたのは、「原住民のうた」と題する、まさしく詩らしくないものでした。 ♪♪♪ オウムはとても長生きで 寿命はざっと百年くらい (おまえ百まで わしゃ九十九まで) なにかの本で読んだっけ * ずっと昔に知らない土地で 滅ん…

ゴムの木 13

「それで、結局、きみはなにを得たのかな?」 キャラメルの黄色い箱をもてあそびながら、大松さんがききました。 「自分で本棚を埋めたくなりました」 「自分の本棚を、ってことかな?」 「そうではなくて、みんなの読む本棚です。自分の本棚は、自分の好き…

ゴムの木 12

「それから、どうしたんだね?」 大松さんが、キャラメルを頬張りながら、ききました。オーソンウエルズのような、いたずらっぽい眼が笑っています。 「それから、ぼくは街を歩くようになりました」 「街を、どうしたって?」 「街を歩いたんです。ええ、毎…

ゴムの木 11

小山が、何杯めかの水を飲みました。 「それで、大学やめる気なんか?」 「それはないな。せっかく入ったんだから、十分活用して、ゆっくりと考える時間にしたいとおもう」 「もう一度きくけど、就職は?」 「そりゃあ、働かなくちゃあ。でも、きみたちが一…

ゴムの木 10

ぼくがどうかしてしまったとしたら、それは大学に入学する前の話でした。北杜夫が父斉藤茂吉に「宗吉はなんたることか、馬鹿になってしまった」(そうきちは、北杜夫の本名)と手紙で嘆かせたように、前年秋の高校の文化祭に顔を出したとき、担任だった小嶋…