2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

大木あまり句集「星涼」四十一頁〜七十八頁

星涼 四十一頁〜七十八頁 夢の世や水をめぐりて通し鴨 人とゐて郭公の鳴く遠さかな 子がをりて湯船に波や麦の秋 目礼の藺草慶子よ鳰は巣を 不発弾のごと草なかの蟇 早鮓や膝を叩いて幸せか なめきじの身の透くほどの豪雨かな 蝶ひとつ目まぐるしくて涼しくて…

大木あまり句集「星涼」三頁〜四十頁

星涼 三頁〜四十頁 菜の花の色であるべし風邪の神 鼻に皺ある恋猫となりにけり 遠足の子や靴下を脱ぎたがる 猫に鈴われにおぼろの紐一本 日焼して億光年を話す子よ うち仰ぐ「裸のマハ」や避暑の宿 干し草は脱ぎたるもののごとぬくし かりそめの踊いつしかひ…

大木あまり句集「火球」百六十二頁〜二百五頁

火球 百六十二頁〜二百五頁(了) 血を採られゐて鯛焼の餡恋し 坐りゐるみんなに春の来りけり 遊ばんと来て梅林の寒さかな どの幹も水に傾く梅の花 釜のふた紅梅は枝張りにけり 梅二月買ひたいものに文庫本 紅梅や土の埃の立つところ 月光の色して梅の傾けり…

大木あまり句集「火球」百二十六頁〜百六十一頁

火球 百二十六頁〜百六十一頁 雲速し母のあらざる秋にして 猫走り出て括り萩括り菊 稲みのる暑さや膝を立てもして 稲車押し青空についてゆく 萩括る馬の尾つぽも括りたし 残菊や馬一頭を洗ひあげ 父の忌の海の上なる星座かな 秋風に羽開くものたたむもの 胡…

大木あまり「句集 火球」八十六頁〜百二十五頁

火球 八十六頁〜百二十五頁 湯豆腐や貧乏ゆすりやめたまへ 艫綱の氷つてゐたる潮かな クリスマスツリーの下のブルドック 餅花に叩きをかけて世紀末 (はた-き) 節分の風唸りゐる海の上 怒る前の河豚の顔とはこんなもの 蹼のあたりに落ちて藪椿 (註:みづか…

大木あまり「句集 火球」四十四頁〜八十五頁

火球 四十四頁〜八十五頁 舞塚にきしねんねこの掃きはじむ はんてんの子の咳をする吉野山 耳たぶは果実のごとし初氷 大波をあやつる海や十二月 浅草の灯のつぶらなる冬の潮 ぼろ市のあとかたもなき日向かな 福助の頭にをるや冬の蠅 プードルのやうな白菊冬館…