2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P48

地獄絵に風の牡丹を加ふべし 俳句を始めてから、地獄絵の句を読むたびいつか詠んでみたいと思っていた。 秩父のあるお寺で地獄絵を観たとき、真に迫った描写に圧倒された。だが、おどろおどろしたなかにも美しさのある地獄絵であってほしい。もし何か足すと…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P46

西行の耳は魔形や桜東風 鴫立庵は、西行の〈心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ〉の和歌で有名。もう三十数年も前のことだが、この庵には西行像があり、風貌は悪魔か鬼神かと思うほど迫力があった。ことに尖って大きな耳が印象的だった。折…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P44

一睡は一生花の霞みけり 不眠症の私でも、月に何回か深い眠りが訪れるときがある。そんな時は、一生分の眠りをむさぼった気がする。「一睡は一生」はオーバーな表現かもしれないが実感。「花の霞みけり」は答えが出てしまったようで、季語が動くと言われそう…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P42

吉野過ぐ花千本をあをく見て ジプシーのような暮しが夢だった。だが、輸血が原因で肝炎となり人生の予定が狂った。それでも漂泊の思いやまず、都合をつけて旅をした。 吉野にもたびたび桜を見に行った。桜の中を漂っていると西行や絶滅した狼に会える気がし…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P40

さくら咲く氷のひかり引き継ぎて 桜の咲く頃は、暖かくなったと思うと急に寒さがもどって冷えこむことがある。それが花冷えである。花冷えという響きから氷を想像してしまうのは私だけだろうか? 光り輝く白い桜を眺めていると、この光はきっと氷のひかりを…

大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P38

栗鼠の尾の土牢を掃き春遅し 鎌倉の光則寺の裏山には土牢があり、周辺の木々を往き来するリスを見たさに俳句の仲間とよく立ち寄った。 その日は、偶然にも土牢にリスがいた。長い尾っぽでしきりに土を擦るリスの動作は土牢を掃いているようだった。「まるで…