大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P48

 地獄絵に風の牡丹を加ふべし


 俳句を始めてから、地獄絵の句を読むたびいつか詠んでみたいと思っていた。
 秩父のあるお寺で地獄絵を観たとき、真に迫った描写に圧倒された。だが、おどろおどろしたなかにも美しさのある地獄絵であってほしい。もし何か足すとしたら、薔薇か藤の花? いや、白い牡丹だ。それも風に揺れる何十本もの白い牡丹。幻想的な地獄絵を表現してみたかった。牡丹ほど炎が似合う花はない。 (『火のいろに』)