2010-09-01から1ヶ月間の記事一覧

銀座百点 号外12

まだ、井伏鱒二の作家論「永井龍男の『はにかみ』」を引きずっている。 「この虚弱な少年が、大正十一年十二月、十六歳の年に帝劇の脚本募集に応じて当選した。」 (中略) 「ひよわくて感受性の強い、しかしキャッチボールなど全然へたくそな少年を私は想像…

銀座百点 号外11

『永井龍男の「はにかみ」』で井伏鱒二は、永井龍男について深く切り込んでゆく。 「後に、文藝春秋社を退いてから文筆生活に入るまでの彼の生活は、自伝体の作品『そばやまで』に書いてある。単行本『胡桃割り』の『あとがき』に、作者自身、次のやうに云つ…

銀座百点 号外10

井伏鱒二に、「永井の会」と題する一文がある。全部引用したい気持に駆られるが、要点だけにふれる。本当は、要点以外が面白いのだが。 「永井龍男が横光賞をもらつた。その祝賀会が美術倶楽部で催され、われわれ世話人はその会のことを『永井の会』と云つた…

銀座百点 号外9

井伏鱒二に「風貌・姿勢」と題して、友人知己のことを書いたエッセイがある。それは、一筆でさっと仕上げたスケッチのようなものである。 例によって、永井龍男について触れた部分を引用することにする。 「彼の旧友のいふところによると、永井龍男は高邁な…

銀座百点 号外8

井伏鱒二に「永井龍男の『はにかみ』」と題する作家論がある(「井上靖・永井龍男集」〈現代日本文学大系86〉筑摩書房、1969年)。ついでだから、これも引用してしまう。 「よほどの虚弱児童であつたらしい。永井君の次兄の二郎さんも云ってゐた。 『龍男(…

銀座百点 号外7

「今度、非常に気持のいい全集が出ると思ひます。」 井伏鱒二は、「永井龍男全集」の推薦文をこう書き出します(註:昭和五十五年一月二十一日発行「永井龍男全集」全十二巻(講談社)内容見本)。 「永井龍男は粋な作品を書きます。粋とは何か。私の蔵つて…