2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ネクタイ 12

ルナアルの「博物誌」だったかに、 「蛇。長すぎる」 とあった。 そのひそみにならうと、さしずめ舶来品(この言葉はすでに死語。昭和50年代には、それでも、まだ、普通に使われていた。いまは、輸入品もしくは外国製品)のネクタイは、 「ネクタイ。長すぎ…

ネクタイ 11

綿貫君が2年のフランス生活を終えて帰国したとき、ぼくと有金君にネクタイをお土産に買ってきてくれた。 「タカシマさん、どっちがいいですか?」 1本はドミニクフランス、もう1本はダンヒルだった。 ドミニクのほうは、あの独特の重厚な織ネクタイで、値段…

ネクタイ 10-2

綿貫君が放り出した棚卸し用紙を見て、ぼくは驚いた。 ふつう、棚卸しのときは、同じメーカーの製品は「品名別」にまとめて記入する。 たとえば、ランヴァンのネクタイは、品名の欄(タイトル)に「ネクタイ」、メーカー名の欄に「フランス ランヴァン」と書…

ネクタイ 10-1

砂糖部長が綿貫君をつかまえて、なにか文句をいっていた。棚卸しの日のことである。 「なんで、こんな数字書くんだよ」 口元がへの字になって、目をギョロつかせて、いかにも意地悪そうな顔になっている。 「こんな数字って、ぼくはいつもこう書いています」…

ネクタイ 9

T汽船のT社長が、時の総理大臣について口をひらいた。 もともと、T社長は、口がわるい(というか、口に毒がある)。 T社長がなにかの試着をしたとき、脱ごうとする上着をうしろで受け取ろうとしたら、突然怒鳴られた。 「触るな!」 おもわず、剣幕に驚いて…