大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P50

 若葉冷え罪を問はれてゐたるかに


 私が第二句集『火のいろに』を上梓した頃、母は俳句への情熱を失いつつあった。気になって「私が俳句に本腰を入れたからって安心しないで、自分のために俳句をやってね」と言うと「心の中で沢山作ってますよ。句集ができるくらいにね!」とうまくかわされてしまった。もしかしたら母から俳句を奪ってしまったのは私? 若葉どきの独特の冷えの中にいると、なぜか罪を問いただされているような気がした。 (『火のいろに』)