大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P44

 一睡は一生花の霞みけり


 不眠症の私でも、月に何回か深い眠りが訪れるときがある。そんな時は、一生分の眠りをむさぼった気がする。「一睡は一生」はオーバーな表現かもしれないが実感。「花の霞みけり」は答えが出てしまったようで、季語が動くと言われそうだ。が、若かったから、あれこれ試してみたかった。一睡も一生も霞のようなもの、という想いがあるのでいっさいを「花霞」に託した。「花霞」と心中するような気分です。 (『火のいろに』)