大木あまり詩画集「風を聴く木」『1-野の梅』

 野の梅


野の梅が散る。
アフリカでは
飢えた子らが
梅の花の匂いも知らず
乾いた頰に
蝿を鋲のように
貼りつけ
見つめ合っているだろう。
遊びを忘れ
指をしゃぶってばかり
いる子らのそばに
もう肉体とはいえない
父や母が
枯木となって
佇ちすくんでいるだろう。
野の梅が散る。
野の梅が匂う。
ちぐはぐな世界だ。