大木あまり詩画集「風を聴く木」『1-稲村ヶ崎』

 稲村ヶ崎


レインコートがふんわり
空から降ってきた。
田村隆一のレインコートだ。
黄金の酒の匂いがするもの。
つまんでみると
諧謔疲労
よれよれになった
詩神が
レインコートの中で
気絶していた。
ああ、詩神よ
酒神と結ばれてはいけませんよ。
熟れた果実となって
太陽が海に沈んでゆく。
レインコートは
空に帰ってゆく。
大きなとんびとなって。