大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P80

夫にして悪友なりし榾を焚く


 兼題に出た「夫」で苦吟していた。農家でもらった桜の根榾を庭で燃やしながら想を練った。その頃の夫は、無愛想で辛辣で頑固。ニヒルな風貌からか、知人達に「眠狂四郎」と呼ばれていた。それで俳味を出すために反語的に「悪友」にした。
 最近、我が夫の眠りさんは、性格も穏やかになり、「自句自解」を書けずに悩む私に「自苦自戒」、僕が書いてやろうかと真顔でおっしゃるのである。 (『火のいろに』)