大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P132

 あかき火となりゆく藁や昼の虫


 藁を燃やすと瞬く間に美しい火となった。その炎に応えるように色々な虫が庭で鳴いている。虫時雨を実感するのはこういうときだ。ときおり木犀の香がして晴れ渡る空一面に羊雲。一匹ぐらい落ちてくれば一緒に遊べるのに。炎の花にまた藁を足す。草むらですだく虫もやがて消えていくのだ。いずれ私も。一束の藁が燃え尽きた。秋の寂しさが俳句へと誘う――。この頃は、母を介護しながら句作に励んだ。 (『火球』)