大木あまり詩画集「風を聴く木」『2-my room』

 my room


わたしの部屋は
黒猫のなかにある。
窓は猫の二つの眼。
ベッドは
ピンクのやわらかい舌。
鏡は猫のハート。
わたしは黒猫になって歩く。
黒猫になって恋する。
黒猫になって攻撃する。
黒猫の爪はわたしの武器。
誰も侵入できない
my room
でも世界のどこかで
核のボタンを押したら
一番さきに
消えてゆく my room。




 水銀の流るるごとし川の蛇


 近くの川辺を歩いていると、夕映えの川面をきらきらと流れてくるものがあった。よく子猫が捨てられているので、子猫の死骸? と目を凝らしてみると一匹、いや二匹の蛇だった。驚く私を後目に蛇たちはしなやかに泳いで行く。水銀が流れて行くように、美しく妖しく……。そして、泳ぎ終えると洲の草の上で優しく絡みあった。夕べから夜へと変わる微妙な時間の中で、蛇たちが見せた一瞬のドラマ。 (『火球』)