大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P166

 鶏糞の匂ひのなかのチューリップ


 友人のお爺さんは、鶏を何十羽も飼っていて庭続きの畑には、肥料のための鶏糞を積みあげた小山があり、春になると、鶏糞の山の裾を取り巻くようにチューリップが咲いた。私が第二句集『火のいろに』を上梓したとき、入れ歯をふがふがさせながら句集『へのいろ』おめでとうと喜んでくれた。お爺さんは十年前に亡くなったが、春になるたび、鶏糞の山は赤いチューリップで華やかだ。 (『星涼』)