大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P168

 麦笛や野に坐す吾はこはれもの


 三十四歳のとき、子宮筋腫の手術を受けた。麻酔から覚め、「もう子供を産めないんだ……」、そう思うと悲しかった。悲しみに追い討ちをかけるように同室の妊婦さんたちから「子供を産めないなんて、一人前の女性じゃない。壊れものね!」と言われた。毛布をかぶって食事も取らない私に、夫は「子どもは君一人だけでたくさんだよ」と慰めてくれた。それを良いことに、未だに私は子供で壊れっぱなしである。壊れながら俳句を作っている。 (『星涼』)