大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P156

 稲妻や辛子をいつも皿の隅


 あるとき、いつも皿の隅に置かれる辛子の気持ってどんなだろう? と考えた。昔々、りんごの気持はよくわかる、という文句の歌があったけれど、たいていの人が皿の隅っこの辛子になど関心を示さないだろう。だが、そんな瑣末なことも俳句には必要だと思う。例をあげたらきりがないが、烏の古巣、釘を抜いた穴、墓の萎れた供花、板の木目などに惹かれる。これからも身辺のささやかなものに光を当てて詠んでいきたい。 (『星涼』)