大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P158

  逝く夏や魚の気性を玻璃ごしに


 しながわ水族館に行った。鮫やアザラシや古代魚など、ざっと見てからお目当の狼魚のところへ。口の大きさと獰猛さがうつぼ(魚へんに單)に似ているが、犬歯のある強大な歯が狼魚の特徴だ。水槽で涼しげに泳ぐ魚たちの中で狼魚はひときわ存在感と異彩を放っている。見入っていると、彼もじっとこっちを見てくれた。
 毎年、飽きもせず狼魚の句を作っているが、今年も狼魚と共に私の夏は終わった。 (『星涼』)