大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P160

身をよぢる月の柱の守宮かな


 荒(こう)ちゃんと名付けた子守宮は今夜も我が家のガラス窓にぴたりと吸いついて小さな虫を捕らえようと夢中だ。大きな守宮に邪険に小突かれても健気に自活する荒ちゃん。まだ、大きな守宮のように月光の差す柱に官能的に身をよじりながら上手に虫を捕らえられないけれど、夏から初冬になって荒ちゃんも成長した。来年は、烏瓜の芳しい匂いに誘われて来る虫を華麗に捕るに違いない。 (『星涼』)